ゴールデンカムイにはアイヌ語とアイヌ料理、それもきっちりと再現されている。
ヒグマの習性なども解説され面白い、とりわけ2巻で登場するアシリパのおばあちゃんがアイヌ語をしゃべる場面があるが、全くわからない。発音なども含め、監修はだれがしているのだろう?
・あらすじ(1巻)
北海道が舞台。時代背景は日露戦争後の日本という設定。
アイヌが隠した金塊をめぐり、争奪戦が繰り広げられる。
アイヌはシサム(アイヌ語でアイヌ以外の日本人のこと)と戦うための軍資金を集めていた。
それを一人の男が独り占めした。他のアイヌを皆殺しにして。男は金塊を隠し、逃走するが警察に捕まり、死刑囚として網走監獄に収監される。男は同房になった囚人に金塊の在り処を示した暗号を入れ墨にして彫り込んだ。金塊の分配を条件に脱獄を指示した。
主人公の一人、杉元佐一は日露戦争を戦い生き残った軍人上がり、幼名馴染みで目の不自由な梅子のために手術費用を捻出のため、金塊の在り処を追っている。一方、アイヌのアシリパはアイヌの金塊を独り占めし、その時に殺された父の仇を追っている。
杉本とアシリパの出会いは偶然だった。
杉本が金塊を追うきっかけとなったのは、北海道に砂金収集に行ったときのことだ。
ガイドの現地人から、アイヌの金塊の話を聞く。最初はホラだと信じなかった杉本。
しかし、その話が信憑性を増してきた。なぜなら、そのガイドの男、酒に酔って喋りすぎたと杉本を消そうと襲いかかる。
杉本は男を撃退したが逃げられ後を追う。
やがて、ヒグマに襲われた男を発見、杉本は子連れの冬眠から覚めたヒグマと出くわす。
ヒグマと格闘する杉本。しかし、、、危機一髪の杉本。そこに一本の矢が飛んできた。
ヒグマは矢を受け動じなかったが、次第に力なく倒れる。
見ると矢を放ったのは、アイヌの少女、アシリパ。
ここから、杉本とアシリパの旅が始まる。
・主人公
・杉元佐一:北海道 第1師団帰還兵。軍は満期で除隊し、幼馴染の梅子の手術費用を捻出をするため、金塊を追っている。
・アシリパ:アイヌの少女猟師。普通は男だが父に連れられ、猟を覚える。金塊をめぐり、殺された父の仇を探している。
・1巻で登場するアイヌ語、アイヌ料理とヒグマの習性
男がヒグマに襲われたシーンでヒグマの習性が描かれている。
ヒグマは喰いきれない獲物は土饅頭(ドマンジュウ)にして、自分のものであると主張する。しかし、おかしい。杉本は子連れのヒグマが冬眠から覚めて襲われたと言っている。
アイヌのアシリパは疑う。
「冬眠から冷めた熊は胃が縮んでいるから人を襲って食うことはない」
アシリパは倒したクマの胃を割いて点検してみると、やはり食べたものは入っていない。
おそらく最初に遭遇したクマは子連れで別のクマが近づいたので、子供を危険から退避させただけらしい。
では、別のクマとは?
アシリパは、この時期に肉が食えるのは、
マタカリブ、マタ(冬)に、徘徊する(カリ)もの(ブ)といわれる、冬眠しそこなった、気の荒いクマだ。
と杉本に説明した。
この男には例の入れ墨が入っていた。杉本は男を近くの村へ運ぼうとすると、アシリパは言う。
「やめておけ、クマは一度手にれた獲物は執着する」追ってくるぞ。
村にクマを案内する気か?
その男はお前の家族か?そんなに大事なら、マタカリブを撃つしかない。
ここで、杉本は初めてアイヌの金塊のことを話、協力を求めると、アシリパも殺されたアイヌの中に父がいたことを告白する。
アシリパは杉本に協力を決めた。
ウェンカムイ:ウェン(悪い)カムイ(神)
クマは一度人間を殺すと、罰として人間しかくえなくなると、アシリパは言った。
アシリパは杉本に一晩中篝火(かがりび)を絶やさぬように支持、シタ(白樺の樹皮)を拾うように指示した。
白樺の樹皮は油が多く持ちが良いのを知っていたからだ。アシリパは言った。
「ヒグマは獲物からあまり遠くに離れない、必ず近くにいる!」
やがてヒグマが現れた!格闘の末、杉本は覆いかぶさるヒグマの下に潜り込み、銃剣で心臓を突き刺し仕留めた。
これをみた、アシリパは杉本を勇敢な戦士と認めた。
アシリパは倒したヒグマを解体し、胆嚢を取り出し杉本にさしだした。乾燥させると生薬として、高く売れるそうだ。クマは捨てるところがないと言う、肉は食べられ、毛皮も売れる。脂は火傷の薬として売れるという。
杉本は一緒に仕留めたから半分ずつにしようと提案すると、アシリパは言った。
「こいつは人を殺して食った。アイヌは人を殺したクマの肉は食わないし、毛皮も取らない。」
「悪いことをしたクマはウェンカムイ(悪い神)となって、テイネポクナモシリという地獄に送られる。」
杉本とアシリパはクチャ(仮小屋;狩猟のための短期滞在小屋として、あちらこちらに建てる)で試食時の支度をする。
リスの巣を見つけ罠を仕掛ける。やがて数匹のリスが罠にかかった。
獲ったリスは丸焼きなどでなく、アイヌ料理のチタタプ(皮をはぎ肉と胆嚢以外の内情を刃物で引いてひき肉料理としてお鍋で煮る)にするという。
リスは小さいから骨と肉を分ける手間が面倒だがチタタプにすれば細かく刻まれ余すことなく頂くことができる。
チ(わたしたち)タタ(刻む)プ(もの)
チタタプは本来、新鮮なうちに生で食べるようで、余った部分をオハウ(汁物)にするという。
オハウにする時、プクサキナ(ニリンソウを干したもの)を入れて風味を倍増させる工夫もある。
血も骨も入れて煮込むので塩味も自然に効いて、出汁もでる。寒いときには美味だ。
食事のときは美味しいと言う意味と感謝の意を表し、ヒンナと言う言葉を言いながら食べる。
寒いといえば、寒波の時に気が割れるパキンと言う音がするが、これを、
ニプシ フム(木が裂ける音)と言う。
<アシリパが身につけているもの:狩猟装備>
・イカヨプ:屋を入れる筒
・アイ:矢
・カリンパウンク:弓
・タシロ:山刀
・サラニプ:リュック
・メノコマキリ:小刀(女性用)
・ユクケレ:鹿革の靴
・チンル:かんじき
・エキムネクワ:山杖
1巻一冊だけでもこれだけ豊富な情報量。とてもただの漫画ではない。
・2巻目でアシリパのおばあちゃんがアイヌ語をしゃべる。
1巻では断片的な単語で慣らしましたが、2巻でアシリパのおばあちゃんが登場します。
ここでは二人がアシリパのコタン(村)に向かいます。
アイヌコタン(アイヌの村)は大きな川、河口付近に数個から数十個のチセ(家)で構成され、尊重のもと、秩序ある生活が営まれていました。
アシリパはフチ(祖母)に杉本を紹介すると、おばあちゃんが口を開きました。
タネポ アシリパ タク ニシパ ネ クスアキヤンネレ ナー
→ 初めてアシリパが連れてきた客だから私達はもてなそう。
聞くところ、エカシ(祖父)は6年前に病死、アシリパの母親も彼女を生んで間もなく病死したという。
おばあちゃんは嘆いていた。
アシリパ エキムネ パテク キ ワメノコ モンライクケ エアイカプ
→ アシリパは山へ入ってばかりで女の仕事ができない。
ケメイキ ネヤ イテセ ネヤ メノコ モンライケ エアイカプ メノコアナク ホク コロカ エアイカプ
→縫い物や織物も女の仕事ができない女は、アイヌの夫を持つことはできない。
スギモト ニシパ タン マッカチ エトゥン ワ エンコレ
→スギモトの旦那、この女の子を嫁に貰ってくれ。
タン クミッポホ クエポタラ ワ モシリ クホッパ カ コヤイクシ
→孫が心配で私はこの世を去ることができない。
ちなみに、アイヌは他民族との婚姻を禁止はしていない。
北方の方ではロシア系アイヌも居て、かなり屈強な体躯をしていたそうだ。
1巻の単語は未だしも、このおばあちゃんの言葉は全くついていけないです笑。
しかし、このアイヌ語ですが、発音含め、言葉は誰が監修しているのでしょうか?
・アイヌ語の監修はこの人が担当
中川裕(ナカガワ ヒロシ)
千葉大学教授。日本の言語学者でアイヌ語研究者でもある。
アイヌ語、アイヌ文化の研究で金田一京助博士記念賞の受賞をしている。
<予告編>
>>ゴールデンカムイ公式サイト
・まとめ
- ゴールデンカムイはアイヌ語、アイヌ料理、動物の習性が学べるアニメ。
- アイヌの狩猟装備が興味深い。
- このアニメは監修もしっかりしていて、評価も高い。
- アイヌ文化に興味がある人に最適です。
1巻をたまたま読んで、完全にはまりました。
今では現状最新刊の16巻まですべて購入済みのきくりんでした。